- Blog記事一覧 -足首捻挫の最新知見
スポーツをしている人、またはスポーツをしていた人は足首捻挫を一度は起こしたことがあると思います。私は現在、小・中学生バレーボールチームのアスレティックトレーナーでもあるので、バレーボール選手に多いケガの中でも足首捻挫は非常に多く発生します。
足首捻挫は医学的に「足関節捻挫」「足関節靭帯損傷」といいますが、一般的には足首を外側に捻ってしまい(内反捻挫・内返し捻挫)、関節を安定させる役割のある靭帯を損傷することです。
足首を内側に捻ってしまう外反捻挫・外返し捻挫というものもありますが、圧倒的に内反捻挫・内返し捻挫のほうが頻度が多いので、ここでは内反捻挫についての解説を踏まえながら、最新知見について解説していきたいと思います。
足首捻挫で損傷されやすいのは外側にある靭帯です。足首捻挫には重症度分類というものがあり、その分類の中で一番損傷されやすい外側の靭帯は前距腓靭帯(ATFL)です。さらに損傷程度が強いと踵腓靭帯(CFL)が損傷されます。
また、外側の靭帯だけでなく場所によっては、前脛腓靭帯または二分靭帯が損傷されることもあります。
足首を外側に捻ってしまうと靭帯の損傷だけではなく、外くるぶし(腓骨外果)の骨折が起こることがあります。とくに多いのは外くるぶしの剥離骨折になります。
足首捻挫を起こした後に自分で立つことができなかったり、患部の足が痛みで地面に衝けることができず歩行している場合は、骨折の可能性を考慮します。
とくに小・中学生では、成長期で外くるぶしの骨に成長軟骨があって柔らかくなっているため、靭帯が損傷するよりも外くるぶしの剥離骨折を起こすことがあります(レントゲン検査でわからないこともある)。
では、骨折の疑いがある時はどのような方法で判断をするのでしょうか?
それは、スポーツ現場でも使われているオタワアンクルルール(オタワ足関節ルール)という方法で評価をしていきます。
オタワアンクルルールとは、カナダのオタワ市民病院の救急医チームによって公開された足首捻挫における骨折の有無を判断する際に使用する評価法です。
【オタワアンクルルール(オタワ足関節ルール)】
・足首の内くるぶし(脛骨内果)6㎝上までの骨の圧痛(押したときの痛み)
・足首の外くるぶし(腓骨外果)6㎝上までの骨の圧痛
・舟状骨の圧痛
・第5中足骨の圧痛
・受傷後すぐに4歩歩けるか
Google AIより
上記の中で1つでも当てはまったら、足首捻挫による骨折の可能性があると考えます。その場合、整形外科に来院してレントゲンやエコー検査で患部を確認します。
足首捻挫の重症度分類は以下の通りとなります。
Ⅰ度(軽症) ⇒ 靭帯が引き伸ばされた状態、痛みと軽度の腫れ、血腫はほとんどみられない
Ⅱ度(中等症) ⇒ 靭帯の部分断裂で、腫れや関節運動も制限される、血腫あり
Ⅲ度(重症) ⇒ 靭帯の完全断裂で、関節が不安定であり、症状の程度が強い
ちなみにスポーツ復帰に関しては、Ⅰ度(軽症)の程度が本当に軽ければ約3日~1週間で復帰できますが、基本的にはⅠ度(軽症)は約2~3週間、Ⅱ度(中等症)は約3~4週間、Ⅲ度(重症)は約1ヶ月~2ヶ月ぐらいでの復帰になります。
約10年前まで施術やスポーツ現場では、足首捻挫の処置法はRICEといわれる患部の処置をしていました。RICEとは頭文字をとって、R(安静)、I(アイシング・冷やす)、C(圧迫する)、E(心臓より足を高く上げる)のことです(英語は省略させて頂きます)。その後、RICE処置からPRICE処置となり、頭にP(保護・固定)が付け加えられました。
近年は、PRICE処置からPOLICE処置という考え方になってきており、POLICEとは頭文字で、P(保護・固定)、OL(最適な負荷)、I(アイシング・冷やす)、C(圧迫する)、E(心臓より足を高く上げる)になります。
近年変わった点は、Ⅰ度(軽症)・Ⅱ度(中等症)の足首捻挫の場合、患部の足首を保護・固定した時に安静にしているより、足を衝いて歩いて日常生活を過ごしているほうが成績がいいといわれています。すなわち、損傷している靭帯に最適な負荷をかけているほうが成績がいいということになります(曖昧な表現ですが、最適以上の負荷は傷口をひろげてしまうことがあるので注意)。
ただし、Ⅲ度(重症)の足首捻挫は別です!
2015年ぐらいから日本のスポーツ界のトレーナーの中では、アイシングの必要性について賛否両論があります。これは足首捻挫だけのことではなく、全てのケガや故障についてのアイシングの必要性についての賛否両論になります。
様々な賛否両論がありますが、とくにいわれているのは、賛成派はアイシングすることで痛みが感じにくくなるというメリットがあるのに対し、反対派はアイシングすることで血管を収縮させて血流を行きづらくなり、組織の再生が遅れて結果的に治りが遅くなるということです。
個人的にはどちらも賛成ですが、私的なアイシング理論は、足首捻挫を例にすると負傷した日のみアイシングをして、翌日以降はアイシングは一切致しません。ちなみ慢性の故障については、アイシングは一切致しません。
参考にして頂ければと思います。
バレーボールを例にして足首捻挫の問題についてですが、それは患部の固定期間の長さの問題です。
実際、高校生バレーボール選手を数名みてきたのですが、固定期間が長すぎると足首が硬くなってしまい、後々復帰した時にパフォーマンス低下ヲ起こしてしまいます。
どのようなパフォーマンス低下を起こすのかというと、足首が硬くなったままの状態でジャンプをするとケガする前と比べて、ジャンプ力が低下してしまいます。つまり、足首が硬くなるということは、ジャンプするときに足首のしなりがしづらくなるということです。バレーボールのスパイカーにとっては致命傷といってもいい問題となります。
したがって、とくにギプスやシーネでの患部の固定期間は、足首が硬くならないように考慮する必要があり、さらに早期の足首の可動域訓練をすることも考慮しなければなりません。足首が硬くなっても元に戻れば問題ないのですが、戻りが遅い、あるいは戻らないことはバレーボール選手だけでなく、他のスポーツ選手には避けなければなりません!
一度、足首捻挫を起こして再び同じ足首を捻挫する人の確率は、しっかり処置や施術を行った場合でも約30%いるといわれています。もし処置や施術をおろそかにして、なおかつスポーツをしている人の場合は、さらに再発率は上がると予想されます。つまり、足首捻挫は再発しやすい!ということです。
初回に足首捻挫を起こした後に、徐々に損傷された靭帯が再生をしていきます。その時に損傷された靭帯が緩んだまま再生すると、足首の内反・内返しがさらにいきやすくなり、さらに足首捻挫を起こしやすくなります。再発をしないために靭帯の緩まないように保護・固定をしていくのですが、実際は難しいです。
損傷された靭帯は受傷後6週間前後までに修復され、その後構築を繰り返し、約6~12ヶ月(最大1年)で靭帯の強度が高まります。すなわち、負傷して約6~12ヶ月ぐらいは足首捻挫が再発する可能性があります。
したがって、とくにスポーツする人は足首捻挫が良くなっても、約6~12ヶ月ぐらいは足首サポーターをして足首捻挫を防止しながらプレーをしたほうがいいでしょう。
私の場合、足首サポーターをして1年以上足首捻挫を起こしていなければ、足首サポーターを外します。
以上で、足首捻挫の最新知見について書かせていただきました。是非参考にして頂ければと思います。